『逆襲のシャア』を見て富野由悠季の闇を感じた
- 大人向け
- どうしようもなさ
- シャアかっこいい
ネタばれありなので未視聴の方は見ないでね。
評価4/5 ★★★★☆
ガンダムを見たのは久しぶりだ。
5,6年前くらい前にファーストガンダムとΖを見たのが最後だったように思う。
それ以外にガンダムを見たことはなかった。
というわけで、ガンダムについてあまり知識がない状態で見たのだが、
まず感じたのは作品全体に漂う大人っぽさだ。
これ、本当に子供向けなのか?
なんだかすごくリアリスティックだ。
アニメといったら、すごく熱いキャラとか、
かわいい女の子がたいていはでてくるイメージだが、そんなものは出てこない。
今回のヒロイン役のような感じで出てきたクェスは、
確かに見た目はかわいいが、
危急の際にうずくまるしかできない父親に向かって唾を吐く。
この作品では軽蔑の感情をはっきりと描く。
かわいい女の子という枠は存在しない。
というか、この作品では女性は大体、嫉妬とか独占欲だとかの汚い感情を持っている。
アニメっぽい過度な強調とかしないせいか、余計リアルだ。
思い浮かべるだろうが、
映画の前半はあまりそういったシーンはない。
それよりも、連邦政府とシャア率いるネオジオン軍の水面下の交渉という
政治的駆け引きだったり、主要キャラの作戦室での話し合いなどがメインとなる。
いや、ほんとに子供向けなのこれ?
ちなみにここまで読んでつまんなさそうとか思う人もいるかもしれないが、
ぼくは別にそんな風には思わなかった。
ディティールが細かい(世界観、設定が細部まで練られているのがよくわかる)ことと、関係があるのかもしれない。
ていうか、キャラの演技が細かいからかも。
さてさて、次はシャアの話をしよう。
シャア、かっこいい。
芯がまっすぐ通っている。ぶれない。そして勝てない。勝てないけど頑張る。
あとシャアが隕石に埋め込まれるシーンは笑った。
絵面がシュール。
最後、隕石落下を食い止めるシーンでのシャアのセリフ。
「結局、遅かれ早かれこんな悲しみばかりが広がって、地球を押しつぶすのだ。
ならば人類は、自分の手で自分を裁いて、自然に対し、地球に対して贖罪しなければならん。
アムロ、なんでこれがわからん!」
そして涙を流す。
正直シャアの心理はよくわからないが、彼なりに人類のために行動しているようだ。
愛の深い男。
シャアが一番かっこいいと思ったところは、
敵の動きを読み切って、ここ一番のところ、敵にとっては一番いやなタイミングで
現れるシーンだ。
ピンチの時に現れるのがヒーローなら、彼はその逆だった。
敵役としてすごくよかった。
さて、そろそろ記事のタイトルにある闇について触れていこうと思う。
それはまあ、見た人なら真っ先に思いつくであろう
クェスの最期のシーンだ。
どうしようもない不幸の連鎖とでもいうか……
あらすじはこうだ。
敵側についたクェスに会いに、ハサウェイ(ブライトの息子)が単身で戦場に向かう。
それを見たチェーン(アムロの恋人)が、ハサウェイの身を案じて追いかける。
無事クェスのもとへたどり着いたハサウェイはクェスに
自分のもとへ戻ってくるように言うが、クェスは聞き入れない。
そこに駆け付けたチェーンが、ハサウェイを助けるため敵であるクェスを撃つ。
ニュータイプの能力で直撃は避けられないと瞬時に理解したクェスは、
そばにいたハサウェイを突き飛ばし、自分は死んでしまう。
そしてハサウェイはクェスの仇として
ハサウェイのことを助けに来たチェーンを撃ち殺す。
なんだろうこれ。
誰も悪くないのにみんな不幸だ。
悲劇って色々な形があると思うが、なんだかこのシーンを見たときには
悲しいというより虚無をすごい感じた。
確か、Zガンダムでも最期、主人公のカミーユが発狂するという衝撃的な展開が
あったと思うのだが、あの時も似たような虚無を感じた気がする。
富野由悠季という人は、どうしてこんな救いのない展開が多いのかと
思わされた作品だった。